
十時五十分の急行
あらすじ
十時五十分の急行がたどり着く結末と息苦しいほど迫りくる男の心情 「あの列車だけはお止めなさい」 片足を引きずっている男はそう言って、列車に乗ろうと考えていた私を引き留めた。理由を聞いた私に、彼は青ざめた顔で話し始める。 以前鉄道職員として列車を運転していた彼は、1894年に起こった大惨事のときも運転手を務めていたという。 それはとても暑い日で、空気が妙に重く、今にも嵐がやってきそうな雰囲気があった。駅を出て3時間ほど走ったところで凄まじい稲妻が走り、辺りは闇に包まれ……。 モーリス・ルヴェルはフランスの作家。「フランスのポー」と言われ、恐怖や悲哀を主題とした残酷物語の短編を多く残しています。 日本においても新青年等に翻訳紹介され、探偵小説の読者を熱狂させたほか、江戸川乱歩、夢野久作、小酒井不木などに絶賛されました。 乱歩は「淋しさ、悲しさ、怖さがルヴェルの短編の随所に漂っている」と言い、久作は「探偵小説で一番好きなのはルヴェルとポーだ」と言っています。 またラヴクラフトは自身のエッセイの中でルヴェルを絶賛し、アメリカと日本でのルヴェルの認知に多く貢献しました。 現在新たな翻訳が出版され、母国フランスや日本においてルヴェルの評価が再認識されています。