
或る精神異常者
あらすじ
めずらしい事件や突発の災難、珍事を見物するのが好きだという変わった道楽をもつ男。今度この男が興味をもったのは、 きわどいはなれわざで観客を魅了する自転車曲芸団だった。熱心に見物する男と自転車曲芸師との背筋が凍る怖い話。 彼は非常にかわった道楽をもっていた。彼が真からあこがれたのは、思いもかけぬときにとつぜんわきおこる惨事、あるいは何か新奇な事変から生ずる溌剌たる、 そして先鋭ななやみそのものであった。そんな彼のいるパリの街に、自転車曲芸団がやってきた。彼は毎晩この曲芸を見にでかけることを心に決めた。 「あの曲乗りの男が頭をわるまで見にゆこう」――それから二カ月間、一晩もかかさず同じ時刻に同じ座席に座った。ところが次の晩、彼は曲芸が始まった瞬間とつぜん席を立ち……。 モーリス・ルヴェルはフランスの作家。「フランスのポー」と言われ、恐怖や悲哀を主題とした残酷物語の短編を多く残しています。 日本においても新青年等に翻訳紹介され、探偵小説の読者を熱狂させたほか、江戸川乱歩、夢野久作、小酒井不木などに絶賛されました。 乱歩は「淋しさ、悲しさ、怖さがルヴェルの短編の随所に漂っている」と言い、久作は「探偵小説で一番好きなのはルヴェルとポーだ」と言っています。 またラヴクラフトは自身のエッセイの中でルヴェルを絶賛し、アメリカと日本でのルヴェルの認知に多く貢献しました。 現在新たな翻訳が出版され、母国フランスや日本においてルヴェルの評価が再認識されています。